センター紹介

近年、歯並びや咬み合わせへの関心が高まり、矯正歯科治療が成人層にも浸透しています。しかし、顎骨の重度な発育異常や変形がある場合、通常の歯列矯正治療だけで不正咬合を改善することが困難です(骨格性不正咬合)。このような骨格性不正咬合による顎の機能異常(顎変形症)に対しては骨格の手術を含む治療が必要となります。当科では多くの矯正歯科専門医と連携し、この顎矯正手術に積極的かつ重点的に取り組み、南九州における有数の顎変形症治療施設となっています。

顎変形症とは?

顎変形症とは、上顎の骨と下顎の骨、または両方の顎の大きさや形に異常があり、上下の顎の関係に不調和が生じている状態のことをいいます。当然、噛み合わせも異常を起こしており、機能と審美性に不調和がある状態を総称して顎変形症と呼んでいます。顎変形症を一般的な言葉で表現すると、

などが挙げられ、非常に身近な疾患であるといえます。

歯科矯正治療単独の場合、健康保険適用は認められていませんが、顎変形症と診断され、外科的治療が必要な場合は保険適応となります。

顎変形症の治療

顎変形症の治療は、矯正治療と顎の手術を組み合わせることで行われ、4つの段階で治療が進みます。平均的には①~③までで3年程度を要します。

①術前矯正治療
矯正歯科医が担当し、期間は平均1~2年です。初めに頭部のエックス線写真、歯型の模型、顔貌の写真などを用いて診断を行います。いわゆる「受け口」であっても、下顎が出ているから受け口になっているのか、上顎が後退しているから受け口になっているのか、正確に診断した上で治療が開始されます。手術で上下の顎を移動させたときに、正常な噛み合わせが得られるように歯並びを整えることが目的です。

②顎矯正手術
口腔外科医が担当します。全身麻酔で手術を行い、約10日間入院していただきます。手術の前日に入院して、翌朝手術を行います。術後は上下の歯をしっかりと固定するため、口が開かない状態です。その後、徐々に口を開ける訓練を開始していきます。それに伴って、流動食から半固形食へと食事の形態が変化していきます。術後のリハビリを十分に行って、自宅でも柔らかい食事が食べられる状態となったら退院となります。退院後は週に1回外来を受診していただき経過観察を継続します。術後1カ月ごろから術後矯正への移行していきます。

③術後矯正治療
術後矯正治療を担当するのは、術前矯正治療を担当した矯正歯科医です。期間は平均1年程度です。治療の目的は、手術で得られた噛み合わせを微調整して、しっかりとした噛み合わせに仕上げることです。また、術後1年間は手術で動かした顎が元の位置に戻ろうとする力が非常に強くかかる期間です。そのため、口腔外科でも経過観察を継続していきます。

④保定期間
歯列矯正治療のワイヤーなどが除去された後、歯並びの安定化をはかるための保定装置を、日中あるいは夜間のみ使用して歯の後戻りを防止します。

顎変形症の手術方法

顎変形症の手術方法には様々なものがあります。ここでは、顎矯正手術で頻度の高い術式を、上顎に対する手術と下顎に対する手術に分けてご紹介します。

【上顎に対する手術】

○Le Fort(ルフォー)Ⅰ型骨切り術(写真⑤)

⑤Le Fort Ⅰ型骨切り術

上顎の劣成長や位置的な異常を伴う場合、笑った時に上顎の歯茎が広く見えてしまう場合(ガミーフェイス)に用いられる術式で、上顎骨を適切な位置に移動させ、固定する手術です。固定にはチタンプレートや、吸収性プレートを用います。

【下顎に対する手術】

○下顎枝矢状分割術(かがくししじょうぶんかつじゅつ)(写真⑥)

下顎枝矢状分割術は、顎矯正手術で最も幅広く行われる手術です。日本でも約50年の歴史のある方法で、世界中多くの施設で行なわれています。当科でも多くの場合、この術式を単独またはLe FortⅠ型骨切り術と併用して手術を行っています。この手術は、両側の下顎骨を薄くスライスすることで、下顎を後ろに下げたり、前に出したりします。手術方法は複雑に見えますが、下顎の中を通る神経や血管を損傷せず、また、手術後の骨のつながりを万全にする方法として非常に有効な術式です。一般的に下顎骨を移動させた位置でチタンプレートによる固定を行いますが、プレート固定を行わないことで、顎関節に対する負担を軽減する術式も用いています。

○下顎枝垂直骨切術(かがくしすいちょくこつきりじゅつ)(写真⑦)

下顎に対する手術では下顎枝矢状分割術の次に頻度の高い手術です。下顎骨の後方を垂直に骨切りして、下顎を後方移動させます。下顎枝矢状分割術と比較すると、術後に顎関節への影響が少なく、顎関節症や、顔面非対称で左右の下顎の移動量が大きく異なる場合には優れた方法です。しかし、下顎を前方移動させたい場合には用いることができません。この手術ではプレート固定は行いません。

○オトガイ形成術(写真⑧) オトガイと呼ばれる下顎のあご先を修正します。この手術はかみ合わせには影響しませんが、上記の手術法であごの移動を行った場合の顔面骨格のバランスを整えるために併用する場合があります。

医療機関の先生、患者さまへ

歯科口腔診療科では年間約50例の顎矯正手術を行っております。「食べ物がうまく噛めない」、「下顎が出ている」、「顎がゆがんでいる」、「噛み合わせが安定しない」、「よく顎関節が痛くなる」などの症状をお持ちの方は一度、顎変形症センターにご相談ください。

認定施設

日本口腔外科学会 専門医制度研修施設
指定自立支援医療(育成医療)機関

顎矯正手術年間症例数

2015年2016年2017年2018年2019年
47例53例58例28例47例